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2018年2月

なぜノロウイルス対策は徹底できないのか その②

2017年3月16日の食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会において、大量調理施設衛生管理マニュアル改正案について話し合われ、「ノロウイルス検査の努力義務」が追記されたなど、改正案は大筋で了承されたものの、複数委員から高コストな検便検査など対策の実効性を疑問視する声が上がりました。また今村知明委員(奈良県立医大)は「もはやノロウイルスは食中毒対策では限界がある」と強調し、感染症として取り扱うことを厚労省に求めました。

難しい話ですが、この内容のポイントは2つです。

①ノロウイルスは検出が難しい。可能ではあるが、はっきりその有無を確認するためには高コストである

②ノロウイルスを食中毒という範疇ではなく、感染症扱いにしてほしい
 
まず①から。
大量調理施設では調理従事者に月1回以上の検便検査を求めていますが、その内容はサルモネラ、赤痢、O-157など数種類を含んでも1回につき1000円ちょい(検査会社によります)です。しかしながらノロウイルスに関してはたった1種類でその4~10倍のコストが生じます。
 
これにもいろいろ理由がありますが、まずノロが菌ではなくウイルスであるということです。例えば菌であれば、検便サンプルを処理して適切な培地で培養することによって目的の菌がいるかどうかわかります。しかしウイルスとなればそうはいかず、ウイルスの遺伝子を人為的に増幅させ、その存在を確認しなければなりません。
 
ウイルスによってはウイルスごと培養することも可能なのですが、さらに残念なことに人類はノロウイルスの培養技術をまだ持っていないのです。
 
またノロウイルスは少ない数でも感染できるという特徴を持っているので、発症前のさらに数が少ない時などは、いよいよ発見が難しくなってしまいます。
 
コスト高、発見が難しい、人工培養できないなど、様々な要因からノロを事前に検出するというのは非常に難しいのです。
 
 
次に②ですが、そもそも食中毒と感染症の違いはなんだと思いますか?
 
「食材を通じて感染するもの」が食中毒で、「人(もしくは動物など)から人へ感染するもの」が感染症です。
 
ご存知のようにノロウイルスは牡蠣などの二枚貝を食することで感染しますので、食中毒で間違いないわけです。
 
それでは食品加工場でのノロウイルス混入、これはどうでしょうか?そもそも貝を扱っていない箇所になぜ発生するのでしょうか?これは従事者がどこかで感染して場内に持ち込み、そこから食材に接触することにほかなりません。
 
その食品加工場で買ったものを食べたのだから食中毒でしょ?いやいやそもそもは従業員が感染していたものだから感染症でしょう?ノロの線引きが揉めている理由はここなんです。実はノロウイルスは厚労省からは感染症と定義されており、感染症法で定点報告義務のある5類感染症に属しています。なので厚労省に求めるまでもなく、そもそも感染症として扱われているのです。すなわちノロウイルスは食中毒の原因でもあり、感染症の原因でもあるのです。
 
 
これを見てるみなさんは「いやそんなことどっちでもよくない?」と思われているかもしれません。いやいやこれ、食品製造の立場から言えばえらい違いなんです。
 
 
食中毒と感染症で本当に我々が知るべき違いは「責任が求められるか否か」ということなのです。
 
食中毒を発生させると、まず社会的責任が発生します。ご存知のようにメディアに報道され、社会的な信用が失われ、廃業に追い込まれる可能性もあります。
 
また行政処分として、食品衛生法に基づいて営業の停止もしくは禁止、営業許可の取り消し、商品の自主回収や廃棄などの不利益処分が課せられます。
 
民法やPL法に基づいて被害者から損害賠償を請求される可能性もあります。
 
さらに刑事上の処分として、食品衛生法違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる可能性があります(食品衛生法71条)。また、業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させたことになりますので5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(刑法第211条)。
 
食中毒って大変ですね。だからこそ「ノロウイルスは食中毒という範疇から外して感染症扱いにしてくれ。だって事前検出も技術的・費用的に難しいんだから」と厚労省に訴えているわけです。
 
さらに悪いことにノロ自体が不活化が難しい部類のウイルスなんです。アルコールを一生懸命かけたところでいっこうに不活化できないし、石鹸で手を洗ったところで無駄です(洗い流せますが不活化はできません)。
 
静岡県給食協会にて2年間キエルキンを学校給食製造工場すべてで採用頂きましたが、その間、静岡県では学校給食由来のノロウイルス集団感染は1件も起きませんでした。事前に給食加工場の責任者を集めて使用方法の徹底を呼びかけたのも功を奏したのかと思います。
 
キエルキンが外されたあとの3月にまたノロウイルス集団感染が起きたときには非常に悲しい気持ちになりました。
 
調理従事者の感染抑制、発見が難しいのであれば、現場で徹底的に叩くべきだと思います。
 
食中毒から外すべきかどうかの論議ではなく、いかに正しい運用をしていくかということが優先される社会であってほしいと思います。
 

なぜノロウイルス対策は徹底できないのか その①

インフルエンザも収まる気配はありませんが、ノロも猛威をふるっております。食品製造に従事する人の義務で、様々な検査、健康チェック項目などありますが、そもそも少ないウイルス数で感染してしまうのがノロウイルス。少しの侵入も許さない、というのは実際相当難しいです。
例えば加工食品(熱を加えた食品)において許される一般細菌数はいくつだとおもいますか?
いやそもそも食品に菌なんていないでしょ?ましてや加熱食品になんて!と思っている方もいらっしゃいます。

なんと「1gあたり10万の菌はいてもよい」ということになっております。非加熱食品ならば100万いてもいいルールなんです。100gの生肉に1億の菌がいてもオッケーなわけです。

では一般細菌とはなんでしょうか?菌ときくとあまりいいイメージはないかもしれませんが、とりあえず人に対して病原性を示さない(病気を起こさない)菌のことをいいます。

なので一般生菌がどれだけいようが人が病気にならないものはならないので構わないのですが、一般細菌が多い=不衛生な環境である、もしくは病原細菌も多い可能性がある、ということで、指標として使われいるわけです。菌がいるなんて気持ち悪い!と思われるかもしれませんが、実際、食品から菌を取り除くのは非常に難しいです。薬剤によって人体に害があってはならないし、また食味を大きく損ねるわけにもいきません。

さて話を戻します。ノロウイルスはどれだけの数がいると発症するでしょうか。実は非常に少ない数で感染可能なのです。わずか10~100個で感染した、というデータもあります。

衛生状態の良い日本で「1gあたり10万個菌がいていいよ」というルールがあるのに、わずか10個のノロウイルスでも感染しちゃうわけです。これを防げ、というほうが大変ですよね。

ノロウイルスはそもそも食品原料にくっついているわけではありません(2枚貝は別です。その話はまた改めて)。そのほとんどは食品会社のスタッフ経由で起こります。

厚生労働省ガイドライン『大量調理施設衛生管理マニュアル』によると、調理従事者は1月に1回の検便義務があり、「必要に応じて10〜3月はノロウイルスの検査も含めること」とありました。2017年6月16日に改定が行われ、「調理従事者に月一回以上検査を受けさせるよう努めなさい」という「努力義務」に格上げされました。

しかしながらこのマニュアルに当てはまるのは表題にもありますように「大量調理施設」なわけです。

「大量調理施設」とは、「同一メニューを1回300食以上又は1日750食以上を提供する調理施設」とされています。

それ以下のところではどのような対応が行われているのでしょうか?「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」というものがありまして、その中に「保健所から検便を受けるべき旨の指示があったときには、食品取扱者に検便を受けさせること」とあります。
「大量調理施設」に当てはまらないところは定期的な検査も必須ではないわけです。

ちなみに学校給食の製造現場においては「月2回の検便検査」を必須としておりますが、この中にノロウイルスの検査をしなさい、という項目はありません。ノロウイルスに関しては「従事者が感染した場合、完全にウイルスが検出されなくなるまで控えさせる」となっております(本内容は「学校給食衛生管理の基準《平成9年4月1日付け文部省体育局長通知文体学第266号の別紙》別紙1 学校給食衛生管理基準《平成21年文部科学省告示第64号》」より抜粋した内容です(間違っている場合はご指摘いただければ幸いです)。

以上より、現時点で食品製造現場にて、調理従事者に対する「厳密なノロウイルス定期検査義務」はない、ということになります。

毎年これだけノロウイルスが騒がれるのになぜこれをマストにしないのだ、そういうご意見が出てくるかもしれません。それはしたくてもできない事情があるからなのです。


なぜなのかは次回に詳しくお伝えします。
 
 
 

インフルエンザ時の風邪薬使用は重々お気をつけください

インフルエンザ感染者数が過去最高というニュースが流れております。本年度はB型が流行っており、一般的に症状がA型ほどひどくないので、風邪と勘違いしている人がおり、それも感染拡大の一旦を担っていると言われています。
 
なにはともあれ風邪薬・・・この考えはインフルエンザの重篤化、さらには感染拡大の原因ともなり得えますのでご注意ください。
 
そもそも風邪薬とはなんでしょうか?
風邪薬は基本解熱剤で、風邪のウイルスと戦える薬は残念ながら人類はまだ作れておりません。
 
したがって、その辛さを少しでも緩和させるために風邪薬(解熱剤)があるのですが、これは風邪を早く治したい人には逆効果です。
 
風邪やインフルエンザ感染時に、体が熱を持つのは免疫がウイルスと戦っているからです。わざわざそれを落とすというのはどういうことかわかりますよね。私は風邪薬がなぜ売られているのか未だ理解できません。どんなに辛くてもファーストチョイスは水をたくさん飲んで、布団に入ってあったかくして寝ることです。
 
いやだってよくコマーシャルやってるじゃん!と言われますが、よーーく見てください、「風邪が治る」とは一言もいってない。「辛い症状の緩和」と言ってるだけです。
 
風邪ならまだしも、インフルエンザ感染時にこれを飲むのが致命的。サリチル酸系解熱剤(有名な風邪薬のほとんどに入ってます)を飲むと、インフルエンザが重篤化し、脳炎、脳症リスクが高まることは有名な話です。その他解熱剤系もそのリスクを孕んでいますのでくれぐれもご注意ください。
 
このニュースにもありますが、現在リスク報告がされていないのが(私の知る限りですが)アセトアミノフェン。世界中で使われており、派手なコマーシャルは全くありませんが日本でも買えます。もしどうしても投与したいというのであれば、いろいろ複合して入ってるものを買うより、解熱成分アセトアミノフェンだけのもを選ぶのが一番良いかと思います。薬局でも買えますので。
 
 
http://biz-journal.jp/2018/02/post_22321.html

「インフルエンザでも休めない体質」が蔓延を拡大させてしまいます

弊社はインフルエンザによる病欠は会社設立以来ありません(あたりまえですが)。社内は常時キエルキン噴霧環境で、社員も対策を勉強しているので、自宅で感染者が出てももらって来ることはまずありません。

 

もちろん家族に感染者が出た場合は遠慮なく休んでくださいと通達しています。なぜなら会社に無理して来てもらって、蔓延でもしたらそちらの方が痛いからです。

 

拡大速度、重篤化を鑑みると、感染している、もしくは感染の疑いがある人に対する出社の強要はテロに近いと思います。感染人数が増えれば増えるほど感染確率は鼠算式に上がっていきます。

 

会社経営者、もしくは管理職の皆様は是非とも御一考ください。

 

この記事にもあるように、リスクマネージメントも兼ねてリモートワーク環境を整えてあげることも感染症期を乗り切るためには必要な投資かもしれませんね。

 

http://toyokeizai.net/articles/-/207128?page=2

塩素はアトピーに影響を及ぼす・・・?

塩素がアトピーに悪影響を及ぼす、ということが盲目的に掲載、拡散されているサイトをよく見かけます。実際、塩素って何でしょうか?よく漂白剤などに使われ、かつ混ぜると危険、塩素ガスを発するなどという危険な文句が並ぶのでそう感じてしまうのでしょう。

 

さて、皆さんが毎日欠かさず口にするものに食塩があります。食塩はナトリウム原子と塩素原子が一つづつくっついたものを言います。そうですね、分子で見れば食塩の半分は塩素なのです。日々様々な食事によって摂取されるので不足することはありませんが、実は人の体内には150gもの塩素が常に存在し、

①胃液の原料となったり、
②血液中でpHを一定に保つために使われていたり、
③白血球のなかで生産され、体内に侵入した敵を駆逐

したりしています。

 

なお、食塩の摂りすぎは高血圧の原因として知られていますが、実は塩素自体は過剰に摂取しても排出されるので害はなく、ナトリウムがそのような健康被害をもたらす要因となっています。塩素ってそれくらい平和な物質なのです。
 

しかしながら科学に明るい人なら、「いや、体内での塩素と漂白剤では塩素の作用が違う」とおっしゃると思います。確かにその通り。
 

大きく分けると、①と②の形は同じで③の形が違うのです。
①と②は塩素としてはおとなしい形です。③の形は非常にアクティブな形で、電子をどこからか奪って自分自身が安定したくて(①、②の状態です)たまらない状態です。
 

ハイターなどはまさに③に非常に近い状態で、それがものすごく濃い濃度で販売されています。さらに商品としての保存性を高めるためにアルカリ性にしてあるので、皮膚刺激性が強く、危険なものというのが一般的な認識です。
 

余談ですがキエルキンも③の形ですが、漂白剤とは異なり弱酸性にすることでさらに電子を奪う力を強くしたものです。なので塩素が入ってるかどうかわからないような薄い濃度でも効果があって、皮膚刺激性がないということを達成しているのです。
じつはキエルキンは形状的には白血球が持つものと全く同じです。体内で強力な殺菌成分を作っても、これが残留しては人体に影響が出ます。それが起きないように、作用後は無害な状態(①、②のような形)になるという、実によくできた生物の自己防衛システムなんですね。

これがキエルキンの安全性を論じる根拠にはなっているんですけども。

さて話を戻します。
 

塩素がアトピーに悪影響を及ぼすのであれば、まず体内に150gある塩素を疑わなければなりません。もしくは塩水を薄くしたものもアトピーには悪影響なはずです。飲食店の調理場の方なんかは汁物かかるたびにヒーヒー言わなきゃならない。そんなことは起きませんよね。
 

次に疑わなければならないのは①②の状態なのか③の状態なのか、ということ。料理や塩水などは①②の状態と言えます。
 

あとは水道水。浄水場では滅菌のために塩素を使っており、これは実は③の状態です。それがごく薄い濃度になったものが我々の蛇口から出てくるのです。逆に蛇口から出てくるときの最低塩素濃度も法律で決められており、0.1ppm(ppm=100万分の1量)を切ることはできません。
 

「アトピーに悪いから塩素を含む水道水を使うな」という内容がネット上ではたくさん見られます。しかしながらいずれも科学論文から引用などではなく、まことしやかな噂が流布しているレベルのものです。
 

それではこのような流れは何故生まれたか?ひとつは浄水器を売りたい人の常套句で、「水道水には塩素が含まれていて、それが体によくない、アトピーのような肌が傷んでいる人になんてもってのほか」という宣伝があったからです。
 

この内容を正確に述べるならば、「浄水場のように塩素がアルカリ性の状態で使用されることには問題があり、発ガン性物質であるトリハロメタンの生成が起こり得る」ということ。

この内容は日本を含む各国で問題視されています。そのリスクを取り除きたければ浄水器をつけなさい、という言いまわしが正確だと思います(またまた余談ですが、キエルキンを弱酸性にしているのはこのあたりの配慮でもあります)。
 

それが一人歩きして塩素あぶない!水道水あぶない!アトピー悪化する!となると、それはちょっと違うんじゃないかと研究する側としては思うわけです。
 

下記のリンク(小児科医さんのブログです)の中で紹介されていますが、「アトピーの患者に希釈次亜塩素酸浴をさせた場合に症状が緩和した」との論文が発表されております。こちらの先生はその論文のその後まで追跡して、消毒というものにそもそも否定的な立場であるにもかかわらず、「症状重めの患者さんに関してはオプションとしての使用はありだろう」と結論づけています。
 

だからと言って「みなさん、塩素でアトピーが治ります!どんどん使っていきましょう」などと私は言いたいわけじゃないんです。
 

塩素を使うとアトピーが悪化するという前提があるならば、治療目的の実験なんてそもそもされないでしょうし、この実験を行った後は、被験者は皆悪化するはずです。それこそ大問題となり、皆が知るようなニュースになっているはずですよね。
 

商売派生の情報が幾多のフィルターを通ることによって、本来の意図と違ったものになることがあります。たくさんの情報が溢れる中でそこに流されないよう、しっかりと精査する能力が必要です。

https://pediatric-allergy.com/2016/04/12/post-81/

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